排液無し、空気置換無し?
先日、スペインのバルセロナにてEURETINA Congressが開催されました。
この学会はヨーロッパで行われる網膜学会の中でも最も大きな学会の一つで、ヨーロッパ各国は勿論、アジアや南北アメリカ、中東やアフリカからも毎年演題発表があり、国際的な活気に溢れています。
今年も日本では聞いたことが無いような、興味深い発表がありましたので、一つ紹介させていただきます。近年PIVOT trialなどによって、網膜剥離に対するpneumatic retinopexyの有用性が見直されていますが、その理由の一つとして、黄斑剥離例に対する術後視力の優位性が提唱されています。排液などによる急激な網膜復位を行わないことで、網膜ズレを防ぎ視力予後を改善することができるという仮説です。ただこの治療の問題点は、硝子体を除去しないため注入できるガスの量に制限があること、牽引を直接解除できないこと、結果復位率が硝子体手術より低いこと、などがありました。
今回発表のあったイギリスのグループからは、通常硝子体手術を行った後、排液や空気置換をせず、裂孔周囲に冷凍凝固を行って、手術終了時に無希釈のガスを少量注入するという、硝子体手術とpneumatic retinopexyを組み合わせたような方法が紹介されていました。結果硝子体手術には及ばないものの、PnRより高い復位率、空気置換例より網膜ずれが少なかったとのことです。
67例のsingle-center studyのため、まだ結論を出すことはできませんが、もし本当に視力予後が良いのであれば今後選択肢になる可能性もあり、興味深いです。
10月16日水曜日行われる硝子体手術クエスチョンバンク、ERMのウェビナーでも、多くの最新トピックを盛り込む予定ですので、お見逃しなく!
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