炎症?血管閉塞?

硝子体出血に対して手術を行ったものの、術中所見として明らかな出血源が同定されず、出血の原因は何だったのだろう?とモヤモヤすることは、硝子体術者であれば誰もが経験することだと思います。

今日は、そのような硝子体出血をきたし得る、診断が難しい疾患の話です。
本日行われた全米網膜フェロー向けの症例検討会の中で、IRVAN症候群が紹介されていました。

皆さん、この疾患名ですぐ病態が思い浮かびますか?
ぶどう膜炎の専門の先生方にとっては割とメジャーなのかもしれませんが、我々網膜硝子体外科にとってはあまり馴染みのない病名のように思います。

IRVAN症候群は特発性の網膜血管炎,網膜血管瘤,視神経網膜炎をきたす疾患で、Idiopathic Retinitis, Vasculitis, Aneurysms, and Neuroretinitisの略です。

特徴として、広範な無灌流域,血管分岐部に多数の血管瘤を特徴とし、硝子体出血をきたすこともあります。

本日のディスカッションでEales病との鑑別についても言及されていましたが、どちらとも他のぶどう膜炎や糖尿病などの全身疾患、血管閉塞性疾患を除外した上で付けられる診断名のように感じられます。ただEales病は結核との関連性が指摘されていたり、視神経乳頭近傍の網膜血管瘤を伴わないのに対して、IRVAN症候群では特徴的な血管瘤がみられ、現時点で全身疾患との関連は示されていないようでした。今回の症例でも、ぶどう膜全検において原因は特定できなかったようです。

治療に関しては、まだ病態が不明なので、レーザーをするべきか、抗VEGF薬を使うべきかなど、わからないことも多いですが、我々サージャンにとっても頭の隅に入れておくべき病態と言えるでしょう。

なかなか海外の学会へ行きづらい昨今ですが、引き続き興味深い情報があればシェアしていきたいと思います。お楽しみに!

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